A.O.Z Re-BootとAOZ2がパラレルである話

本記事は『ADVANCE OF Z 刻に抗いし者』の最終話について書いている。もう完結からだいぶ経った作品であるが、まだ読んでいない人はそのことに注意していただきたい。
今までの記事でも最終話の内容は書いてきたのでいまさらな話であるが…

現在『ADVANCE OF Z』シリーズは、『A.O.Z Re-Boot ガンダム・インレ-くろうさぎのみた夢-』WEB連載で展開している。
読みにくい漫画である。
曖昧な色使い、やたら多い登場人物、飛びまくる時系列、並び順すらどこから読めばいいかわからない。
いや好きなんですよ?
ジオンもティターンズも火星住民もみんな等しくクソだけど苦しい環境で元気に生きてますという本作独自の視点に、見たことのないロボットが説明なしにどんどん出てくる展開で、作者がやりたいことはこれなんだろうというのがよく伝わってくる。
連載は超マイペースの不定期掲載で、2章が一向に終わる気配がなくて全然話が進まないが数えてみたら単行本一冊じゃ済まないくらいのページ数になっててこれどうするんだ感。立体もムックも出なくて商売になってる要素がないぞ。
とにかく読みにくいのはわかっているが、現在は無料で読めるので今のうちに読んでほしい。
何故バーザムが火星で増殖してヒーローになっているのか!ストーリーを読まなければ怪設定の面白さも半減だ。これを読まずに建機ザムを論じちゃならん。
いや本当に小説版「審判のメイス」みたいにリブートも急にパッと消えるんじゃないかと僕は怖いのだ…
現在の『Re-Boot』の舞台は『ガンダムZZ』より後の宇宙世紀0091年の火星であるが、火星を舞台にした宇宙世紀ガンダムはこれ以前にも存在する。
ひとつは漫画『機動戦士ガンダムF90』。宇宙世紀0120年、オールズモビルこと「火星独立ジオン軍」とF90の戦いを描く。
AOZリブートにはこの「火星独立ジオン軍」そのものが登場しており、メカ設定でもつながりを意識したものが非常に多い。

もうひとつがAOZシリーズ2作目『ADVANCE OF Z 刻に抗いし者』(AOZ2)である。小説を中心に展開した本作は宇宙世紀0085年からグリプス戦役の終結までを舞台とするが、最終話で大きく時間が進み、宇宙世紀0095年の火星の様子を描いている。
その火星の情勢が、現在展開中の『リブート』と完全に矛盾してるのである。

AOZ2:0095年時点で火星最大の植民地は「マリナー・シティ」。火星初の植民地であるアマゾニア低原に存在する。
リブート:0091年時点で火星唯一の植民都市はアルカディア平原の「サイドA」またの名を「アルカディアシティ」だけである。(2章2に「唯一」と説明あり)

AOZ2:0095年時点でマリナー・シティは植民後数十年である。
リブート:移民は宇宙世紀初期から始まっている(2章1など)。0091年時点で?100年くらい前には人間が来ていた(2章7)。

AOZ2:0095年時点で火星が特定勢力の支配下にあるという情報はない。ただしジオン共和国系の資本が投入されている。
リブート:0091年時点で火星を支配しているのはレジオン国。旧ジオンの影響下にある勢力だが、現存するジオン系勢力との結びつきは示されていない。アクシズの協力組織だった火星独立ジオン軍(ジオンマーズ)とは対立状態である。

AOZ2:素性を隠して紛れ込んだ元ティターンズ兵は、MSを動かせるというだけで重宝された。
リブート:元ジオン兵もティターンズ残党もいっぱいいるし火星生まれのパイロットもいる。強化人間すら素性を隠していない。

AOZ2:資源に乏しく工業力も低い様子。
リブート:資源の量は不明だが工業力は高く、MSの量産も行っている。

AOZ2:発電機として払い下げのジム用熱核反応炉を買い取って動かしてるような状態。作業に用いられるのはミドルMS。「武器と呼べるものなんかない」。
リブート:火星にはハイザックからバーザムまでバリバリモビルスーツ軍団が存在。

AOZ2:オリンポス山でジオン共和国系資本による巨大マス・ドライバーが建造中である。
リブート:オリンポス山にはレジオンの本拠地があり、インレを建造中である。

AOZ2:「まだ一度も戦争になったことがない」。
リブート:かつてレジオン建国戦争というのがあった。現在もジオンマーズ残党との戦いは続いている。

無理だこれは。どう見ても説明がつかない。
調整不足でちょっとした矛盾ができたというよくあるやつではなく、完全なパラレルである。
しかし、公式にはこの矛盾についての見解は示されていない。
だからといって前作を知らない人がストーリーを作ってるというわけではなく、意識的にやっているようなんである。
これだけ違うのに前作を意識したと思しき描写が結構あるからだ。

まず、開拓の進む火星を舞台に選んだことそのものが前作を意識しているのではないかと考えている。
この点で、『F90』を知ってると違和感がある人もいるだろう。0120年時点の火星で見られたのはジオン残党の基地だけであり、都市があるという描写は一切なかった。
このことについて、AOZ2最終巻のあとがきで、作者の神野先生が火星開発への熱い思いを語っているが、ここで後の時代の作品についても触れている(何かに配慮したのか『F90』と作品名は明記していない)。後の時代の火星が開発されている描写はなかったと。
しかし火星に植民が行われていなければ、単独の組織が観測されずに火星へ行って工事を進めるのは難しい、航宙艦の噴射光も容易に観測されるとも指摘を交え、火星開拓は行われていて、その裏でマスドライバー建造に偽装し、オリンポス山で工事を行っていたという解釈を取ったという。
つまり、あえて『F90』の描写に合わせないことで、『F90』の描写の補強を兼ねているわけである。
まあ、『F90』でオリンポス山が活動してたりフォボスに戦艦がぶつかったりするあたりまで整合性が取れてるかは微妙な感じだが、開拓地が描写されなかったのは、画面に映らなかったということで、宇宙世紀の火星開拓は行われていたという解釈を選んだのである。

『Re-Boot』は火星の状況こそ前作から受け継いでいないが、やはり火星開発は進んでいる。そしてこちらは前作よりも開拓が進んでおり、火星独立ジオン軍も既に存在、ジオン系勢力がいろいろ工事しても連邦にとやかく言われないくらい状況が混沌としている。
前作が『F90』に合わせなかったのをなぞるように、リブートも火星開発描写を進め、そして『F90』だけでなく前作にも合わせていない。

ついでに火星関係で前作と合ってる描写は以下の通り。
・宇宙港がフォボスにある
・ウサギ肉が食べられている
合ってるから何なんだというレベルの要素だが、特に後者はAOZ2における数少ないウサギ要素であり、それをオマージュし返しているように見える。

メカニック面の話もする。
今のところ『Re-Boot』の設定で言及されたAOZ2のメカはハイザック[ヴァナルガンド]のみであり、他のAOZ2出典メカは画稿すら掲載したことがなく、言及さえしていない。

ところでRe-Bootの主役機エルアライラー。
こいつはティターンズ時代はラブスカトルとユニットを組み、共に地球に対する核攻撃を行う予定だったという設定である。結局作戦は実行されなかったようであるが、そもそも核攻撃作戦なんて話はAOZ2にしかない話だったはずである。強化人間用モビルアーマー[ハティ]による地球への核攻撃はティターンズの起死回生の策であり、結局それは実行されなかったわけだが。
まったく別の機体で同じことをやる予定があったのか?
それだけではない。ラブスカトルの護衛機であるエルアライラーだが、[スコル]の設定をなぞったようにそっくりである。MAとの連携を前提とし、防御用の迎撃ミサイルの存在、盾に仕込まれたビーム攪乱幕弾頭なんて特殊な装備までそのまんまである。
強化人間の乗るMAと、その盾となる可変MS、そのユニットによる核攻撃という記述。
エルアライラーとラブスカトルの関係は、明らかに前作のスコルとハティの関係だ。意識していないはずがない。
最近もアクア・バーザムとガルグイユに見られたように、数多くの「似たMS」を時に強引に結び付けてきたリブート怪文書集だが、このときスコルとハティについては全く触れていない。まるでこの世界に存在しなかったかのようだ。もちろん別の部署で作っていた同じような機種をあえて設定中で紹介する必要はないわけだが。
これって別の部署で作ってたというより、「最初から存在しなかった」「前作とはメカニック面でもパラレルである」という意思表示なのではないか。
そしてこの2機が前作オマージュなのは間違いないとして、いずれケストレル相当のヘイズル・フレアも出てくるんじゃないかと僕は予想している。

・他に前作オマージュと思われる部分。
EWACアッシマーの通称「パンケーキ」が前作のMF「マタ・ビリ」の通称そのまま。
アメリカ軍の試験機「XF5U」(フライング・パンケーキ)に合わせてるというところまで一致だ。このマタ・ビリのパンケーキという通称も、XF5Uに合わせてるというくだりもAOZ2のメカ設定には書いてなく、小説本文にしか書いてない情報である。偶然一致したんじゃなく、ちゃんと読んだ人がここぞとばかりにオマージュで入れてるはず。

・バーザム関係
AOZ2のバーザムはインジェクション・ポッドがある。リブートはプリムローズIIが入ってる。
明らかに矛盾している!
いや、弁護側が知らないだけでリブート設定にもプリムローズの入ってないバーザムがあったのかもしれない!

建機ザムのパラレル的扱いは既にAOZの枠を越えた問題かもしれんが、リブートがバーザムを異様に持ち上げるのは前作に理由があるかもしれない。
初代「ティターンズの旗のもとに」は、さまざまな背景を感じる建機バーザムをデザインしておきながら、設定をさほど掘り下げることはなかった。これは活躍の場が残されていなかったというのもあるだろうが、まず連載当時プラモになる見込みがなかったことが大きいのではないかと思っている。ベースキットもないこいつを持ち上げるのはホビー誌の企画として趣旨に反する。
(どうもTR-6はプラモ化するつもりでデザインしてるっぽい)
だがAOZ2はそんなこと全く考えずに作者の私情によりバーザムを不自然に優遇し、結果偏った勢力から反響を得た。
その後のバーザム商品化ラッシュもあって、リブートの頃にはバーザムのプラモ化も現実味を帯びてきていたが、それでもバーザムに4回連続で設定をブチ込むのは異常だった。
これは前作へのオマージュというか、ある種ライバル意識だ。以前は遠慮してたけど俺のほうがもっとすごいバーザムを出せるぞというプライド。素バーザムでは済まないバリエーションを出してやろうという対抗意識の結実がグランザムみたいな名前のグラン・バーザムであり、前作がビグ・ザムみたいなMFをバーザムと同じニューギニア基地で開発してたことへの逆襲だ。そっちがビグザムならこっちはグランザムだと。
当ブログはそのように受け取っている。


『A.O.Z Re-Boot』は、『刻に抗いし者』とパラレルストーリーである。それもおそらく前作をよくわかった上で、あえてパラレルにしている。
あえて、そういう独自世界を作った動機まではわからないが…
描きたいストーリーがどうしても前作と矛盾するものになったから、歴史を否定しながらオマージュを入れてるのではないかなあと想像するのみである。ちゃんと説明する気があるなら聞いてみたいし、それはネガティブな理由ではないと思いたい。

シナリオ面での矛盾とは別に、メカニック面では明確な矛盾はないように見える。しかし、スコル・ハティをスルーしていることから、これもやはり意識したうえでパラレルにしている可能性は高いと僕は思っている。
前にうちでバーザム年表を書いたときも少し触れたが、ストーリーに矛盾がある以上、あの遠大なバーザム開発史も他作品と断絶している可能性、十分ある。時系列の矛盾についてもニューギニア基地の陥落時期が違うかもしれないし、リブート外のバーザムにプリムローズIIは入っているのか。
こうなると初代の描写が有効な保証もない。番組でのバーザム初登場より遅い初代ヘイズル・アウスラだって、リブートじゃなぜか量産されてる設定になってるし開発時期が違うかもしれないぞ。
(はっきり言って初代の頃から、建機メカの設定は年表との整合性にあまり興味がなかったように見える)

AOZ同士の矛盾は明確だが、『Re-Boot』とアニメシリーズで比べると、気になる矛盾はとりあえずない。バーザムの姿が違うくらいだ。
しかしそれも現時点の情報であり、いずれ堂々と矛盾する設定を出してくる可能性も否定できない。
既にドーベン・ウルフの無線ハンドが強化人間仕様であると、さりげなくラカン・ダカランが強化人間であるみたいな書き方をしている文書もあるのだ。これはミスじゃなくて「こっちのラカン」は強化人間と解釈してるんだと思う。
『Re-Boot』はそういう独自色の強い作品であって、その姿勢を支持したいのと同時に、これを他の作品と一緒くたに扱うのは相当慎重にやらないとダメであろうと思うわけである。
[ 2017/07/23 22:46 ] ガンダム | TB(0) | CM(0)

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