ミノフスキー・フライトとは何だ?

昨年から放送されているGレコでも「ミノフスキー・フライト」という言葉が出てくるがこれについての話をしたい。

ガンダム世界には「ミノフスキー・クラフト」というのがあって空を飛べる。それはいい。
Vガンダムの設定には「ミノフスキー・フライト」というのが出てくる。これはミノフスキー・クラフトとは何か違うものとされている。では何が違うのだろう?

さっそくネット設定の話からするが、よく見つかる「ミノフスキーフライトは既に散布してあるミノフスキー粒子を使用するので装置を小型化できる」旨の説明だが、これは情報源不明であり、かなり怪しい。この出典不明設定では「戦場の粒子濃度によってフライトも影響を受ける」などと、もっともらしく説明していたりするが、Vガンダムのアニメに登場するいずれの飛行機体もそれを気にして飛んでいた様子は無い。むしろ粒子が散布されていないと思われる状態でも飛んでる。
さらに言うとVガンダムのモビルスーツは単独でミノフスキー粒子を散布しているとしか思えない描写があるので、散布装置の有無が大幅な小型化につながるとは思えないのである。

ただし、このネット設定の元ネタらしい文章は見つけているので、一概に間違いと言えるかどうかは、それもまたわからない。将来的に似たような設定なら成立するかもしれない。ただ、現時点ではそういう設定があるわけではなさそう、というのが自分の見解である。また資料見逃してたら知らん。
さて、実際「ミノフスキー・フライト」とはどういう設定なんだろう。
先に結論を書いてしまうが、自分で集めた情報を総合すると、以下のような感じになっている。
・ミノフスキー・フライトとミノフスキー・クラフトとは何かが違うらしい。
・だが何が違うのか、文献によって説明が違うので定説がない。
・ミノフスキー・フライトは富野由悠季が使い始めた呼称と思われる。
・具体的な設定がついたのはVガンダム当時の「MS SAGA」と思われる。
・「MS SAGA」は小説版Vガンダムを読んでから設定を考えた可能性が高い。
・たぶん富野監督は当時も今もミノフスキー・クラフトとミノフスキー・フライトの区別を持っていない。
・どうも現在ではクラフトとフライトの違いが不明瞭な状態で、「何かがクラフトと違うもの」として不完全な設定が生き残っている。

*どの機体が装備しているの?
公式非公式考えず、「機動戦士Vガンダム」登場機のうち何らかの資料でミノフスキー・フライトの装備が確認できたのは、僕の調べた範囲ではVガンダム、ゾロ、そしてセッターだけだった。
※ガンイージに搭載されているというネット設定が見つかるが、これは個人の妄想に基づくものと思われる。
Vガンダムへの搭載はほとんどの設定資料で明記、ゾロ、セッターは小説版設定を含む一部資料で確認できる。
なおアニメ本編中でミノフスキー・フライトという名称は一度も出てないはず。

*現在はどういう設定なの?
多数の資料の記述を総合した資料として、現在通用する設定をほとんど網羅している総解説ガンダム辞典ver.1.5なのだが、ミノフスキーフライトについては「Vガンダムに搭載されていて、小型化している」というくらいで、まともな説明がない。
はっきり言ってこの本に載ってない設定は信憑性が低いものばかりなので、ミノフスキーフライトについて信憑性の高い設定は存在しないと判断。
(もっとも、この本も変な資料から引いた記述があるようなので、過信しすぎるのも問題あるが…)

*MS SAGAと小説版の関係
小説版の口絵の解説と、MS SAGAの両方に伸童舎が関わっていたので同じスタッフが書いてると思われる。そして「MS SAGA」のものは明らかに小説版を参考にしている箇所がある。
ただし以前の記事でも書いたが、MS SAGAは現在公式な資料扱いではないらしい?
少なくとも「総解説ガンダム辞典」は、MS SAGA由来の設定を扱っていないようである。

*富野由悠季が区別してないと思われる理由
まず、この用語はVガンダムの小説より前に、遅くとも閃光のハサウェイの時点で既に使用されている。が、閃ハサの本文で説明があるのは「クラフト」のほうであり、このときの「フライト」は単に「ミノフスキークラフトで飛翔するやつ」という程度の意味と思われる。
ともあれ「ミノフスキーフライト」という言葉を生み出したのは富野監督の可能性が高い。
さて、小説版Vガンダムでは何度か「ミノフスキー・フライト」が登場するが、こちらではミノフスキークラフトとの区別が説明されていない。というかこっちの小説では「ミノフスキークラフト」という言葉が一度も登場しなかった。
時は流れ、Gのレコンギスタ、の前に「宇宙エレベーターの本」という本で富野由悠季がインタビューに答えているのだが、このインタビューでGレコに出てくる宇宙エレベーターは「ミノフスキーフライト」で浮いているという説明をしていた。Gレコの公式サイトを見たらクラフトなんだが。
で、Gレコのアニメ中ではクラウンもモビルスーツも戦艦も「ミノフスキーフライト」で飛んでる。
これら小説Vガンダムにしろ、Gレコにしろ、従来のミノフスキークラフトと区別されているようには見えないのである。

*小説版とMS SAGAを比較
ミノフスキー・フライトの変遷に関しては、MS SAGAと小説版を発表順に交互に読むと答えが見えてきた。

小説1巻(初版93年4月):
・ゾロの「ビームロータ」は、ビームシールドを改良して「ミノフスキー・フライトを補完しているらしい」
1巻でフライトが出るのは11章のこの記述だけ。ビームローターについては別のページで「ビームをロータとすることで、最小限度のミノフスキー粒子の反発力を機体の下方にながして、揚力にするのである。」だそうで。
これらから「ビームローターは風力で飛んでるわけではないっぽい」「補完という書き方だがミノフスキー粒子の反発力を生むのがローター自体なのかローター以外の装置なのかよくわからん」と読み取っていいだろうか(誰に聞いてる)
で、1巻では「ミノフスキー・フライト」がゾロ以外に装備されている記述は存在しない。

MS SAGA VOL.2(初版93年6月20日)
主にゾロについての解説がある。
・まだMSへのミノフスキークラフトの搭載は難しかった
・ビームローターは斥力の強いフィールドを形成する技術

ここまでは今の資料でも見られる設定とほぼ同じだが、
・ビームローターが形成したフィールドはすぐ拡散していくが、それを再構成して利用するのがミノフスキーフライトで、これを利用しているのがゾロのボトム・ターミナル。
・まだ未成熟な技術であり単独飛行はできない。

つまり「ミノフスキークラフトとミノフスキーフライトは違うもの」「ビームローターの存在が前提でゾロのボトムターミナルしか飛ばせないのがミノフスキーフライト」である。
また、
・「ミノフスキー粒子が散布された空間であれば」機体周辺にIフィールドより弱いミノフスキーフィールドを生成すれば浮力が獲得できる。
という文面があり、たぶんだが、ネット設定の元ネタはどうやらこのVOL.2のこの記述だと思われる。この「ミノフスキー粒子が散布された空間であれば」という原文に「(散布装置が無くても)ミノフスキー粒子が散布された空間であれば」とチョイ足しすることでネット設定に近づいた。確証はないが、たぶんこれが転じたんだと思う。
でも、アニメ見る限りゾロにもたぶん散布装置はあるんだ。

小説2巻(初版93年9月1日)
・ビクトリーのコアファイタは粒子の反発力を利用したミノフスキー・フライトでホバリングする
・セッターはミノフスキー・フライトを使っている高性能機である
・ビクトリーのハンガーにはミノフスキー・フライト用の加粒子を発生させるエンジンがある、粒子を噴出させるノズルがそこかしこにある
・コアファイタのミノフスキー・フライトによる揚力の発生は数十秒という短時間しかできず、高度を取ることができない

このくらい説明がある。ゾロについての説明は一切なく、ミノフスキーフライトがゾロ特有の装備みたいに解説していたMS SAGA VOL.2と内容が合わない。粒子はVガンダム自体が発するようだし、ビームローターなしでも使える。
そして、従来のミノフスキークラフトとの違いがあるかどうか怪しい。違いがあるとすれば持続力が低そうなところだが、セッターには持続力の問題はなさそうであるし、これはVタイプ固有の問題だろう。
また、2巻の口絵には伸童舎の手によるメカの解説がついていて、セッターがミノフスキーフライト機であることを記述している。

MS SAGA VOL.3(初版93年9月20日)
・セッターもミノフスキーフライト機だったことが「明らかになった」
・ベスパ以外も重力下の移動方法を完成させていたようだ

なんか推測形で書かれてる。アニメにミノフスキーフライトは出てこないはずなので、小説版2巻で「明らかになった」ということだと思う。

・ミノフスキークラフトの小型MSへの積載はまだ現実的でない
・ボトムターミナルのミノフスキーフライトが単独で稼働できるようになればMSの制空能力は大幅に向上するだろう
・Vガンダムの飛行にもミノフスキーフライトシステムが用いられている。ビームローターの立方格子は不要で、単体でミノフスキーフライト可能になっている
・ただしVガンダムは単独では大した高度は取れない
・飛行により揚力を生み出さない限り、数十秒しか稼働できず、ゾロと違って空中で静止することなどはできなかった

少なくともVガンダムのミノフスキーフライトは「ローターで生成した立方格子を利用する」ものではないようだが……同じフライトという名前でもゾロのものと全く違うことになる。ミノフスキークラフトの機能縮小版ってことか?
やっぱり小説版の記述に従ってガンダム自体が立方格子を散布してるのだろうか。その辺の説明が不十分な感じ。

また、
・ミノフスキークラフトはエンジンとジェネレーターが健在であるかぎり長時間稼働できる
・さらに自重相殺以上の立方格子を形成し、上昇時のプロペラントを節約できる
・ゾロとVガンダムのミノフスキーフライトは、そのどちらかを選択して開発されたものなのである。

ううん。
自重相殺するタイプがVガンダムで、長時間稼働できるタイプがゾロって意味なんだろうか。Vol.2の説明と微妙違ってるように見える。いやゾロは自重相殺できてないってことでもないだろう。あとセッターはどうなったんだ。

MS SAGAの設定はここで終わり、Vol.4以降にミノフスキーフライトについての詳しい説明はこれ以上ない。
もう僕の中で結論は出ているのだが、
「小説版に不意に出てきた「ミノフスキー・フライト」をミノフスキークラフトと別のものだと判断してMS SAGAで設定を作成したが、小説の作者はそんなつもりではなかったため記述が変化してしまい、それに振り回され中途半端にまとまった」
のがミノフスキーフライトだったのだろう。

その後、94年の「NT100%コレクション」99年の「データコレクション」では、ミノフスキーフライトはクラフトより高高度で使えるもの、みたいに書いてある。これはこれで何でこの設定になったのかよくわからない……
2009年の「総解説」では、こちらの設定も採用しなかった。ミノフスキーフライトの正しい設定などないのである。
現状ではなんとなくクラフトより簡易のような性能が高いようなものとでも思っておけばよいと思う。
[ 2015/01/04 00:25 ] 未分類 | TB(0) | CM(2)

放送当時の解説

Vガンダム放送当時に読んだ解説本には、こんなふうに書いてありました。

「ミノフスキーフライトは、気流をミノフスキー粒子を使って制御し、強制的に揚力を生み出す装置」
通常揚力は、翼の形をした物から生まれるが、ミノフスキーフライトは翼の形をしていない物でも、揚力を作ることが出来る。そのため、航空力学を無視した形状の、ハンガーやブーツも、空を飛ぶを可能とした。基本的に揚力で空を飛ぶためミノフスキーフライトは、機体が推進している状態でないと、使用出来ない。
[ 2015/03/11 17:47 ] [ 編集 ]

コメントありがとうございます。
その当時の解説本のタイトルがわからないと何とも言えませんが…MS SAGA vol.3の内容に似ているようですのでその本か、もしくはまた別のものに同じようなものが載ったのかもしれません。
[ 2015/03/11 23:20 ] [ 編集 ]

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