進撃の巨人と富野由悠季とGレコ

こないだから「進撃の巨人」と「Gのレコンギスタ」の世界設定が似てる気がするという話を考えていて、その流れで以前話題になった「富野由悠季が進撃の巨人を批判した」という話について。

といってもこの件の経緯は非常にナニである。
経緯
①「ちょくマガ」という角川の有料メールマガジン……のようなもの……?で富野由悠季が進撃の巨人を批判した。
その一部はここで公開されているが、「絶対に読みたくないし、評価もしたくない作品」と題し、本文の中から「進撃の巨人」批判の部分を取りだして、変な太字強調を入れてセンセーショナルに抜き出している。
(なお、このメルマガ「トミノ流のトミノ」はのちに電子書籍化されている。該当号もkindle版が買えるので、全文が読みたければそっちで参照してもらうのがよいだろう)

②このメルマガが公開されてから2週間ほど後になって、j-castという名前のニュースサイト……のようなもの……?が「富野が進撃をコキ下した」というニュースらしいものを出した。
この記事は雑な要約であって、まあ実のところ富野がちょくマガで言ったことと大幅に変わってはいない気はするのだけど、原文を読んで富野の考えを知った人と、雑に「コキ下ろし」とか「一応の評価は示した」とか要約されたものだけ読んだ人では意識がズレてくるだろう。
さらに「ネットではこうした富野さんの考えに納得できないという「進撃の巨人」ファンが多くいて、」と偽って、記者にとって都合のいい意見を2ちゃんねるで適当に探したのか、記者が自分で信者とアンチをエミュレーションして書いたのか、実に適当な反応をのっけてある。
こういうやり方は不快なのでリンクは張らない。このトミノの進撃批判がベタ褒めに見える人がいたら富野ファンではなく、単に愚かだと思う。

③j-castの記事を元にブログのようなものたち?が2ちゃんねるの反応……らしいもの?を張る。

④これでは人に品性を求めるなど絶望的だ。

(なお、この件について岡田斗司夫が富野はツンデレだとフォローを入れたようなまとめもあったが、ソースが見つからず、まとめブログが別の岡田発言についてのレスを適当にまとめたものと思われる。岡田氏がこの件に何か言及しているか怪しい。俺も釣られた。
もし本当にその程度のフォローしか入れていないのだとすれば、岡田氏も富野の原文をまともに読んでないということになるが、岡田氏はそこまで軽率ではない気がする)

諫山創は劣等感を抱いていた過去があり、あるいは今も抱いているのかもしれないが、それが「進撃の巨人」にも強く反映されている。
「ちょくマガ」だけ読んだものには、富野が諫山創をそのように解釈したように見えるだろうが、これは諫山本人が何度も言ってきたことであって、富野が見たというニュース番組でも言っていた可能性が高く、富野はそれを紹介しなおしているだけのことだろう。

しかしそれを見た富野も間違えているようで、諫山の鬱屈した人物像が「いじめられっ子」に変換されている。
僕も諫山創の発言すべてをチェックしてきたわけではないが、たぶん直接いじめられていたとは一度も言ってないし、いじめられていたわけではないんでないかな……。富野なりに諫山の人物像を噛み砕いた結果「いじめられっ子」に変換されのかもしれないが、誤解を招く表現と思う。
もちろん進撃の巨人に諫山の過去の思いが強く出ているのも間違いない。「いじめられっ子」に近い心境もあったとは思うし、乱暴に噛み砕けば富野の言い方で大きく間違ってはいないかもしれないが。
もっとも、富野自身を除けば、この件を歪めた①~③の全員が諫山の人物像など知らず、興味もないと思われる。

残念なことに、富野の「進撃の巨人」評はあまり興味を惹かれる内容でははなかった。繰り返すが作者の私的な経験が反映されてるのは作者自身が言ってることで、作品に対する富野の批判も①で読める程度でほぼ全部であり、よく言われてることの域を出るものとは感じられない。
まあグロいのがダメだとすれば進撃の巨人は確かにダメであろう。グロいというのは絵柄だけでなく物語のグロさも含むのだろうけど、どちらかというと絵柄のことに感じられる表現だし、ストーリー面のグロさについてあまり深く掘り下げていないのは残念だ。
(巨人の絵には『地獄先生ぬ~べ~』の「人食いモナリザ」の影響があったことを作者が後になって思いだしている)
またグロ批判のどさくさで「エロとグロ」と口走ってしまっているが進撃の巨人はそんなにエロくはない。いやエロという言葉は深いものであるし、もっと別の意味でのエロであるからダメなのかもしれなし、単純に巨人が全裸でいるさまをエロと表現しているだけなのかもしれないが。
①で読めない部分は作者よりも編集者や世情に対する批判であり、それ自体はまあ論争の種にはなる。

j-castの取り上げ方にはもう一つ問題があって、「『進撃の巨人』は時代の閉塞感をものすごくうまく捉えていて」という一番肝心な評価と、そう言いつつ4巻までしか読んでないことはメルマガの前の号の序文で言ってるのだが、メルマガの該当号には含まれてなかった。
何か話が噛み合わないのはそのせいだな。
kindle版ではその辺も読めるし、ワンピースを50巻くらいまで高く評価していたが今は読んでないという話も読めるぞ。

Gレコと進撃の巨人の話
ここからはメルマガのことと関係ない話。進撃の巨人のアニメ化してない範囲の話題があるので注意してください。

Gレコの舞台であるリギルド・センチュリーには「スコード教」と呼ばれる宗教が君臨し、技術の発達を制限している。
地球全体に影響を持つ集団のようであるが、神のようなものへの信仰とは少し違うように思える。

進撃の巨人の世界には「ウォール教」という怪しげな宗教が存在している。彼らの教義は壁をいじることを禁止しており、それほど信仰を集めているわけではないのだが、こちらは絶対的な権力を持つ王政と結びついて権力を発揮している。
これらは本来の宗教的なものとは少し違うように思う。

スコード教は崩壊した宇宙世紀を繰り返さないために技術の発達を拒む教えを広めているようだ。そういう教訓が宗教という形をとるというのは時間の経過が感じられ、興味深い視点だが、現代の宗教にある神のような超自然的な存在への信仰とはかなり異なるように思える。

ウォール教は巨人や壁について何かの秘密を隠ぺいしているようで、主人公たちからすれば邪魔でしかないのだが、どうも権力や利権が目的ではなく、何か人類存亡に関わるような目的がある?
教義はその隠ぺいを目的にしているらしい。
一般の信者は単に教えを信仰しているだけだが、ウォール教の高位の司祭などはその秘密を知っている。そしてそれを守るためなら命を投げ出すほどの覚悟ができている。そうでもして秘密を守らないと世界に致命的な影響があることがわかっているから絶対にできないとか、そういった科学的といえる判断があるようだ。
読んだ限りではこういうものを管理する団体がたまたま宗教の姿をしているのであり、目的ではなく手段としての宗教のように見える。こちらもまだ連載中なので、具体的な部分は不明なのだが…

ウォール教はそれほど強く信仰されているわけではなく、王政と結びついているため権力だけは確かに持っている。その王政の支持率は非常に高い。しかし王政も壁の秘密を何か知っている様子だ。
対するスコード教は王政の役目も兼ねていると考えれば、少し違うが非常に似た構図だ。

違うのはスコード教が技術発展を拒む理由である宇宙世紀のことが、おそらく多くの信徒にもよく知られていること。
スコード教がウォール教と同様に重要な秘密を隠ぺいしているかどうかはわからない。スコード教もトワサンガの存在を正確に説明していない様子ではある。

そうすると攻めてきたGは巨人のようなものであり、Gを動かす才能を持ったベルリは、まさに巨人になれるエレンとよく似たポジションにいる。
従来の富野ガンダムでも主人公の特別性は描かれてきたが、ガンダムの操縦そのものに何か制限があるものはたぶん初めてで、しかもその理由が今のところ謎になっている。出自の謎なフォトン・バッテリーは巨人の力そのものだ。物語の軸の中に「謎」が散りばめられたガンダムは意外と珍しい。

もちろん何から何まで似てるとは思ってないが、「進撃の巨人」自体が割とガンダムに似ているのかもしれない。進撃の舞台は謎の年号で850年。スペースコロニーではないが、壁の中という閉鎖的な世界で100年以上暮らしている人類。壁の中は農場も森もあるほど巨大な閉鎖空間。
進撃の巨人の世界でも過去に人類が滅ぶような出来事があったことが示唆されている。
未来のような世界と仮定して、人種などという概念は消えているが、東洋人らしい血筋と名前が出てくるという雰囲気作りも似ている。
いちいち変な話題で脱線するキャラクター造形もそういえば似ているかも…

「進撃の巨人」がガンダムから直接影響を受けた様子はない。
(「マブラヴ オルタネイティヴ」の影響は強く受けているらしいが、それがガンダムとつながるのかどうか僕が知らない)
だが進撃の巨人(原作)の設定には小太刀右京と三輪清宗が参加している。これだけでもかなりガンダムっぽくなった。
進撃の巨人がガンダムから直接の影響はないと思うが、ガンダムに強く影響を受けた何かから間接的影響を受けている可能性は大いにある。
アニメ版「進撃の巨人」の監督がGレコにも参加するという話であるし、実写版「進撃の巨人」の監督は富野由悠季が出演した「ローレライ」の監督だ。
まあそういう発見がどうしたという話であるが。
[ 2014/10/31 23:23 ] ガンダム | TB(0) | CM(0)

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