ゲーム攻略本が設定を創造する―、あるいはガノタは「さんせつこん」をトンファーにする

ゲームの攻略本が好きである。
楽しみ方はいろいろで、パラメータを比べたりするのはもちろん、一度クリアしたゲームでも過程を再確認したり、知らない攻略法に驚かされたり。
攻略本がなければ見つからない隠し要素なんてのもいいが、やはりゲームに出てこない裏設定が書いてあるのは良い攻略本だと思う。

名著「ウィザードリィのすべて」の話をする。
著者は「隣り合わせの灰と青春」でゲームノベライズの分野を開拓したベニー松山。
本書はファミコン版「ウィザードリィ」と「ウィザードリィII」の攻略と解説書であるが、ゲームの攻略本としては珍しく著者名が表記されている。
攻略本としても基本を押さえたものとなっているが、見どころは読みごたえがある解説だ。モンスター、シナリオ、アイテム、呪文、街の運営やゲームシステムの解釈に至るまで、様々な解説がなされており、読み物としての完成度が高い。
本書はアスキー協力のもとに編集されたようだが、設定のほとんどはベニ松氏のオリジナルと思われる。「隣り合わせ~」でフラックのブレスの属性を間違えてたことに言い訳も書いてある。
「ウィザードリィ」はモンスターの設定がゲーム内では確認できないので、本書の解説は主にパラメータと末弥純のイラストに基づいた創作。もっとも、そのイラスト自体が他のモンスターマニュアルに元ネタがあったりするようだが。
ウィザードリィは原作に明確な設定のないゲームだから、このように独自解説を書くのも自然なことだった。
間違いもちょっとあるよ。レベル10ファイターは名に反してレベル7なんだけど(マカニトが効く)、本書はレベル10だと信じてるようで、レベル8より性能が劣ることを不思議がっている。
「ささえのたて」が8Fで入手できるというデマもこの本にある。実際は入手法はないようである。でもたまに入手報告あるんだよなあ。8Fだから出るって設定はしてないと思うが…
こういう間違いがあるのも、攻略本をメーカー提供のデータに頼らず(というか完全なデータが提供されてないのだろう)、手作りしてる裏返しであると言えようが。

ウィザードリィで密かにおすすめなのが、ローカスの「ウィザードリィ リルガミン サーガ 公式ガイドブック」。「ウィザードリィのすべて」と対照的に、設定面の掘り下げはほとんどないが、こちらはデータ面が充実している。ACが命中率に与える影響や罠解除の成功率など、ファミコン版では公にされていなかった具体的な計算が載っている珍しい本だ。まあPS版とファミコン版で計算違うものもあるが、かなり概要は通じるだろう。
敵が落とすお金とか、侍のHPの計算法(1レベルぶん多くダイスを振る)とかこの本で初めて知った。クリーピングコインはお金を持っていないと言われていたが、実は落とす金額が同ランクの敵より多いらしいぞ!
あと単純にPC版マップのダイヤモンドの騎士の攻略本は貴重。
また、移植スタッフのインタビューだけでなく、珍しいことに末弥純と羽田健太郎のインタビューが載っている。これもポイント高い。
この本の弱点をあげるなら、何を思ったか地図をポリゴンで描画していて読みにくいことだ。データもかなりレアな情報が載ってるのはいいが、戦闘の計算がコラムとして飛び飛びのページにあったり、#1から#3の三作のデータが変な順番で載ってて散り散りである。読みやすくない。

ゲーム中に出てこない設定が攻略本に書かれるというのは「ウィザードリィのすべて」に限った話ではない。FFの攻略本も大好きですよ。
NTT出版の「ファイナルファンタジーIII 第1巻 基礎知識編」
本書は本格的な攻略に踏み込む前の、ジョブ、魔法、さらに世界観の詳細な設定解説書だ。あと石井浩一さん、時田貴司さんと、スクウェア社員の人のイラストがちょっとだけ載ってる。
この「基礎知識編」には大きなバックストーリーがあり、過去にサロニアとサスーンの間で起きた黒魔道士と白魔道士の戦争というのを記述している。その脇でファルガバードを興した魔剣士レオンハルトの話や、街の人口とか面積とか、ゲームを進めるうえで何の役にも立たない情報が山ほど載ってるぞ。アムルの人口598人とか何を数えたんだ。
いやこれは面白いんだけどこれ公式設定?って不安になる。

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でもオフィシャルガイドブックって書いてあるし…
しかし本書以外でサロニアとサスーンの戦争なんて聞いたことねえしDS版でも全く出てこなかった。本書の内容はその後別の公式本やDS版に反映された様子はない。

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ジョブチェンジで少年たちにヒゲが生える理由は個人的にこれで納得している。性別もか。

NTT出版のFF3攻略本は全3冊。「第2巻 完全攻略編 上」「第3巻 完全攻略編 下」がある。2巻以降はストーリーを追った攻略と、アイテム、モンスターの解説だ。こっちも見どころは多い。
この記事で注目したいのは没モンスター。ファミコン版FF3には「グラフィックとパラメータが設定されているがどうやっても出現しない」というモンスターが数種類存在する。ところがそのうち何体か、「さまようきんか」「フリアイ」などが間違って?攻略本に載ってる。
この攻略本に載っていた没モンスターは、DS版では正式に出現するようになった。
だが全部ではない。データ内に存在していて攻略本には載っていなかった他の没モンスター、「フェニックス」「テリブルドラゴン」などはDS版にも登場しない。

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さらに、この「シードラゴン」は他の没モンスターと違い、ファミコン版のデータ上も存在しないそうだ。攻略本のパラメータはネプト竜と大部分一致しているとのことで、データごと改名されたと推測される。そのシードラゴンだが、DS版ではかなりレアなモンスターだが出現する。
すなわちDS版は、ROMの中に埋もれていたデータだけではなく、攻略本も参考にして没モンスターを復活させたと考えられる。そういうこともあるわけ。

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アイテムのほうも。有名なページだがトンファーはサイで三節棍はトンファー。
ライターは「さんせつこん」が何だかわからなかったのだろうか…でもゲームのグラフィックはどっちもヌンチャクといっしょだしサイってことはないよなあ…
イラストが間に合わない事情があって仕方なく別のものを転用したんだろうか。
逆にサイに対応する武器はFF3にないんだけど、何のために描いたイラストだ?

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モーニングスターもこんなイラストだけどゲーム内ではちゃんとモーニングスターだからな!しかもこのゲームにメイスなんて分類ないから!
ただでさえバイキング使わないので知ってる人ほとんどいないと思うけど、FF3のモーニングスターは戦闘では固有グラフィックの鎖鉄球で、ヌンチャクの色違いで済ませているトンファーと違ってちゃんとモーニングスターの名にふさわしいグラフィックがある。攻略本のイラストは完全な間違い。

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説明文はあってる…

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だいたいこれはFF2のミスリルアクスのイラストだ。これは徳間書店の「ファイナルファンタジーII完全攻略本 上巻」(公式という表記のない本)。違う出版社でイラストの使いまわしがあるということは、これら武器イラストはどうもスクウェア側から提供されたものではないかと思うが、謎である。
実在の武器に対する間違った解説。そういうこともあるだろう。当時の最大手レベルのRPGでさえも、攻略本に正しいことが書かれないというのはありえる話だった。それはそれで記憶されるべき話ではないだろうか。
「ウィザードリィのすべて」にも、フレイルが何か知らないように感じられる記述があった。

あと「あくまのためいき」
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それっぽい解説がついてるが、実際の効果はエスナではなくキルだ。攻略本が間違い。
だがなぜかDS版ではエスナの効果の「てんしのためいき」に変更されている。スクエニ的に攻略本の解説が正しくてゲームのほうが間違ってるって判断でもあったんだろうか?
どうせ影の薄いアイテムだから、あえて古い攻略本の誤記に合わせてみた?これも不思議な話であるね。

NTT出版のFF攻略本というと、FF4以降の点描イラストも馴染み深い。「SFC時代の攻略本版エクスカリバー」のデザインは、ゲームの印象とはだいぶ違うのだが、FF12のトウルヌソルの元ネタとして使用された(正確には5のエクスカリパーのイラストとのことだが5の攻略本は持ってないの)。リメイクや続編で過去の攻略本からネタを拾う事例は探せばそこそこあるのだ。

プレミアがつく攻略本も増えてきて、まあレーシングラグーンファンブックみたいな珍しい本ならそれもわかるんだけど、正直とても貴重なようには思えない攻略本も高値がついてたりする。古いハードの本をなぜかブックオフが扱わないせいもあるんかなあ。
ラグーン以外で僕が持ってるやつで言うなら、スーパーメトロイドの攻略本がかなり値上がりしてるようだ。
「任天堂公式ガイドブック スーパーメトロイド サムス・アランの2時間59分」。あの複雑なマップの惑星ゼーベスを、ベストエンドの時間内でアイテム全回収できる攻略ルートで完全解説する攻略本だ。序盤にボム取った直後に遠回りすれば取れるアイテムも、わざと後回しにして最短ルートで進めていく熱い攻略。
さらにスタッフインタビューや占星術師アリアドーネ・ユウコさんによるサムスの夢診断コーナーもあるぞ。
この本も設定書として価値がある。
メトロイドには北米のNintendo Power誌に載ったスーパーメトロイドの漫画というのがあって、それが21世紀以降のメトロイドの設定の基礎になってるんだけど、当時の日本版では、その漫画の一部カットや解説が、この小学館の攻略本に断片的に載ったくらいしか情報源がなかった。
サムス自身が鳥人族の後継者であることと、キートン議長の名前は、日本版ではおそらくこの攻略本が最初に出したものだ。
もっとも、北米版の漫画にあったサムスの育ちも惑星ゼーベスであることや、リドリーとの因縁などはこの本にも書いてなく、日本版では長年明かされてなかった(はず)

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攻略ページにあった惑星ゼーベスのえらく細かい設定。これは北米版にはない設定のようだ。今回確認してないがマガジンZ漫画版に一部反映されてる模様。

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こっちにはアイスビームのものすごい設定が書いてあるが、これはなかったことになっており、現在も普通に冷気として説明される。

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あと白黒ページにクリーチャーの名前、説明書に載ってないやつもこの本で一通り明らかになるが、フーネのパワーアップ版ナミヘ。ネーミングひどすぎるだろ。
このスーパーメトロイドに限らず、アクションゲームは攻略本がないと名前わからない敵がかなり多い。コンボイの謎の攻略本もザコ敵の名前全部載ってるやつ持ってたんだけど、どこかにしまい込んでしまった。

そう、今回の記事で書こうと思ってたんだけど発掘できなかった攻略本がひとつあるんです。双葉社の「メトロイドII必勝攻略法」。
「公式」とつかない薄い攻略本で、攻略も手作りで不完全で、載ってないミサイルタンクがいっぱいあるという、あまり優秀とは言えない本だ。ただしメトロイドIIの紙の攻略本はこれしかない。
メトロイドIIはスーパーメトロイドと違い、クリーチャー名が一通り説明書に載ってるので、この本で明らかになる情報はラスボスの名前(説明書には載ってないが、公式サイトには載ってる。おそらくゲーム誌などで公開されたのだろう)くらいなんだけど、ひとつだけ気になる情報がある。メトロイドIIには序盤から出てくる「上から落ちてくるスクリーみたいな敵」がいるんだけど、全ザコの中でこいつだけ説明書に掲載されていない。
海外でも「Yodare」という非公式の通称があるのみだった(誰のネーミングかは知らん)。
双葉社の攻略本もこの敵だけ紹介をスルーして、名前は掲載していないんだけど、しかし攻略ページのどこかに「通路の上から落ちてくる岩つららに気をつけよう」みたいなことが書いてあったはずなんですよ。こいつ特につららのようなクリーチャーではないんだけど。
時は流れ、サムスリターンズにこいつも登場した。そして、その北米版の攻略本でこいつの名前が「Rock Icicle(=岩つらら)」になってたんだと…
公式じゃない攻略本由来の情報が26年後に海外で反映されたということ?そこまで読み込んだマニアがいたんだろうか。
興味深い話だ。
ここまでわかってるのに、この攻略本を発掘できず、記憶のみで書いてるのは非常に残念な感じなので、もし発掘できたら更新したいと思っています…
なおサムスリターンズは日本で攻略本が出ておらず、クリーチャーの日本版公式名は全部不明である。




攻略本は公式かどうか関係なく、たまにゲームに存在しない設定を発生させることがある。それが時を越えて、ゲームのほうに反映されるということさえあるのだ。そのパターンはおおむね以下の3通り考えられるだろう。

1.もともとゲームの製作側にそういう設定があって、たまたま攻略本で発表された。
これは普通。

2.攻略本のライターが独自に設定を作った。
これもありうる。

もうひとつのパターンとして、
3.攻略本のために制作側が新しく設定を作った
というのも考えられる。FF3基礎知識編はライターが作ったパターンのような気がするが、「あくまのためいき」の件とかを見ると、一部公式が作ったものも入っているのではないかと思う。

誤解してはならないが、仮にライターの創作設定であったとしても、それが間違ってるとは限らないことだ。オフィシャルを名乗る以上、公式サイドは一定のチェックをしてお墨付きを与えているはずである。イラストは公式側の提供っぽいし。そこに公式性がないわけではない、公式の名に信頼はあるのだ。


そういうチェックしたうえで、さんせつこんを通してしまったスクウェアは甘いというのは、そうだが。
「ウィザードリィのすべて」の場合なら、これは良書だし突飛な解釈をしてるわけでもないけど、たぶんチェックしてるのはアスキーだけで原作メーカーのサーテックはほとんどチェックしてないだろうということも言える。ほぼ独自解釈本だろうと判断できる。

実在の武器やモンスターに対して間違った解説をしてしまうのを責められはしないこともあるし、独自解釈することもあるだろう。ゲームに出てない部分の設定に解釈を与えるのも攻略本の仕事だと考えられる。
もっとも、ゲームの大容量化で、そういう解説がゲーム自体に付属することも多くなった。
攻略本に解説が必ずしも求められなくなっていくのは、もう20年前のリルガミンサーガの攻略本でも既にそういう傾向が見える。
でもそういう解説があるのとないのでは、やっぱりあったほうが嬉しいと思うのである。

ところで、実在の武器や既知のモンスターではなく、既存のロボットアニメの設定で、攻略本のライターによる創作が行われていたらどう思う?
うん、またなんだ。
長い前フリだったが、これはガンダムゲーの攻略本についてのお話なんです…
以下はある程度ガノタじゃないと面白くないです…
むしろガノタでもちっとも面白くない、不愉快に思えるかもしれません…書いてる僕がそんなに面白くないです…
[ 2018/01/26 22:48 ] ガンダム | TB(0) | CM(0)

∀ガンダムとGレコの時系列と真意

「ガンダム Gのレコンギスタ」は「∀ガンダム」の500年程度未来を想定した物語である。
放送終了から半年近く経った2015年8月27日、生配信されたトークショー「夜のGレコ研究会 ~富野由悠季編~」(跡地 http://live.b-ch.com/g-reco)で富野監督によって不意に明かされた事実だ。
これは大変な混乱を生じた。同席した小形プロデューサーを筆頭に関係者の誰もこの事実を知らなかったし、リギルド・センチュリーは∀ガンダムの時代「正暦」より前と放送前から設定にも明記してあったからだ。
それから2年が経過した。表向きは何も起きていない。何も。

・ターンエーは最後のガンダムである
はずだった。それは「∀ガンダム」という作品内だけで留まる話ではなく、以降に作られるすべてのガンダムに対して強制力を持つ設定であった。00もAGEも全て黒歴史に含む。
プラモの説明書にもそう書いてある。
MGターンXの説明書
当然「Gレコ」もそうだと思われており、メカデザイナーを含む何人かの関係者もそれを意識して制作していたことは幾つかのインタビューでも明らかになっている。
Gレコの設定でも、リギルド・センチュリーは「『∀ガンダム』で描かれた"正暦(Correct Century=C.C.)"よりも前の時代に位置する。」と最初から書いてある(先行上映のパンフレットの記述)。このような明記は異例なことである。00やAGEは黒歴史に含まれると作品の外側で言われつつ、わざわざ作品内の設定で宣言などしていない。設定で正暦より前だと宣言しているリギルドは、∀に明確につながる物語だという意識が他のガンダムより強かったように見えた。…番組の外では。
※SEEDは黒歴史関係の話題が設定上にもあったかもしれない

・設定は変わっていない
富野監督自身がよく自覚しているようなのだが、トミノの発言に公式設定としての効力はない。Gレコは∀より後だと富野が言おうと、それが関係者の承認を経て公式設定とならなければ効力がないのだ。
で、研究会から2年が過ぎた2017年現在の状況を確認しておくが、どうも2年経っても設定が変わった様子がないのである。
そりゃGレコの設定がいまさら更新されるタイミングがないから、そうなるでしょ。

発売が延期されて研究会の翌月に出た「ガンダム Gのレコンギスタ オフィシャルガイドブック」が最後のチャンスだった気がするのだが、この本の用語集でもリギルド・センチュリーの項で「なお『∀ガンダム』の作品世界「正暦」は、さらに先の時代である。」って書いてある。延期しても反映するヒマはなかったか。
また各種文献にはこの設定が書いてあるが、公式サイトの用語集には正暦との関係が書いてなかったので、特に更新されることもなかった。
これが公式サイトにも書いてあったなら、逆に後からでも更新しなおすこともできただろう。

・発言自体も消え去っている
研究会の映像はスマホアプリ「ガンダムチャンネル」で再配信され、問題の部分も編集されていなかったので、公式的にはセーフな発言だったのだと思う。
しかしガンダムチャンネルはガンダムファンクラブに移行し消滅、研究会の動画もどのタイミングで消えたのか知らないが、今は残ってないようである。gundam.info等での公式レポートもなし。ガンダムエースとかにもたぶん書き出されてない。
富野の発言は公式には残っておらず、見ていた人間の非公式な伝承の中だけに残されている。

これが2017年現在の状況だ。
いや劇場版Gレコが正式発表されれば何らかの設定化はあるかもしれないが、劇場版がないんだからしょうがないじゃない…
公式サイドこそ発表のタイミングをじっと待ってる可能性はあるものの、2017年9月時点では相変わらず「Gレコは∀ガンダムより前」というのが公式設定のままである。客観的にそう考えるしかない状況にある。

ここからは長い話になる。
[ 2017/09/18 19:48 ] ガンダム | TB(0) | CM(2)

マレーネ・カーンが爆死していた件

(私の姉はザビ家に尽くし、宇宙の果てで死んでいった。しかし私は死ぬものか。
新しい血をザビ家に加え、必ずや復活してみせてやる。ネオ・ザビ・ファミリーよ)


『機動戦士ガンダムZZ』32話「塩の湖を越えて」でハマーンがこのように語っている。

『ガンダムZZ』のラスボスたるハマーン・カーン。その動機には、ザビ家を好いていないというのが根底にある。ハマーンは姉のようになりたくはないのだ。
だからハマーンはザビ家の名前だけ利用して、自分好みのジオンを作ろうとしているのである。44話でもザビ家を利用して見返してやりたいという本心をジュドーにぶっちゃけている。
ハマーン・カーンのこういう立場は、セリフ量としては大したことはないが、アニメでもはっきり描写されているもので、そんなにわかりにくい話ではないと思うのだが…
『ZZ』をちゃんと見てれば、という条件はつくが…

さて『ZZ』32話で言及されているハマーンの姉だが、アニメ中で言及があるのはここだけだ。名前も含めてどんな人物だったのかは定かでないが、アニメの説明だとハマーンと対照的にザビ家に忠実な人物だったようである。
[ 2017/08/06 22:19 ] ガンダム | TB(0) | CM(0)

バウとバーザムがつながった

発売から一ヵ月経過したが、モデルグラフィックス2017年8月号は、バーザムファンの聖典となる一冊であった。
特に岡本英郎インタビューでは数多くの新事実が明らかになったが、今回はそのひとつ、バーザムがバウになったという話について考えてみたい。

バーザムが可変機だったという噂について尋ねられた岡本氏、「結局それがバウになったんですよ」と衝撃の告白をする。
・デザインが終わったバーザムを今度は変形させようということになり、分離合体のデザインを考えた。
・途中までやって出渕裕に渡した。
・バウの顔は最初はもっとバーザムに近い形だった。

ということで、バウの原型はバーザムだった

いろいろ前提の話が必要だろう。

バーザム可変機説について
そういう噂はあったが、これは特に根拠のある話ではなかった。ネット上で見られた俗説である。
誰が言い出したということでもなく、特定の由来はないと思う。バーザムのMA的な丸い胴体や、リアスカートの羽根っぽい形状とか、なんか変形しそうな感じはあった。
しかし決定稿のバーザム自体は、特に変形しそうな構造は残っていない。
強いて根拠を探すと、数年前に岡本さんがtwitterで可変の話を振られて、否定しない反応を残した、というのがあったのだが、これは思うに可変機としてデザインされていたわけじゃなくて、後から可変機につながったことを思い出しての反応だったのだろう。俗説はあくまで俗説だったようだ。

バウのデザインについて
バウのデザイン経緯は何度か語られているが、ラフもクリンナップも出渕裕のものであり、主にひとりのデザインだと考えられていた。ガンダムZZで出渕裕がクリンナップまでしたのはバウだけだと当時から明言している。あとガルスJの頭部だけ出渕クリンナップ。
バウがZガンダムを意識したデザインということもわかっている。『MISSION ZZ』でも「Zガンダムを単眼にしたイメージで描いた」と語っている。
(デザイン上はそうなのだが、設定上ではごく一部の資料を除いて、Zガンダムとのつながりを示す説明は稀である。近年RE/100でZ計画機の影響を受けた設定を採用している)
トサカがついてるMSは珍しく、バウからバーザムを作れるのではないかという話はモデグラでも以前やっていたが、デザイン段階でつながりがあるとまでは考えられていなかった。

さてバウのラフが載っているのは、『出渕裕 メカニカルデザインワークス I』(2巻は出てないっぽい)の29ページ。バウの原型「ヒリュー」のラフが掲載されているのだが、

>連邦のガンダムや百式をベースに開発されたんでしょーね、やっぱし・・・
ゴッタ煮メカだねホント・・・


いやデザインしたのあなたじゃないんですか?!

この他人事みたいなコメント、つまりラフの前に誰か別の人がデザインしたものがあったということではないだろうか。その段階で百式とZガンダムっぽい要素があったと。
その原案が今まで明らかにならなかったのは、あえて出渕裕のインタビューで触れるようなものではなかったのかもしれないし、むしろ誰がデザインしたものか出渕さんにも定かでなかったのかもしれない。
モデグラの岡本インタビューでも、富野監督がいろんな人のデザインをコラージュしてデザインさせてたという証言をしている。バウもそのたぐいだったかもしれない。

だいぶ憶測が入ってしまったが、ヒリューからバウになる過程で百式要素は薄れ、ゴッタ煮ではなくZガンダムひとつに似せた機体へと集約していった様子はデザインからも見える。
ついでに憶測を重ねると、出渕裕は陣営の違いや開発系譜を比較的考えるメカデザイナーだと思うのだが、バウは敵勢力のパクリという珍しいMSである。これも系譜をあまり考慮していない原案が先にあり、たまたまZガンダムのゴッタ煮っぽかったと考えると話が合ってる気がする…
ゴッタ煮よりはZガンダムひとつに絞ってパクったほうが系譜的に納得しやすいと…

もひとつ、モデグラのインタビューとは別の岡本インタビュー
このインタビューに岡本氏がバウの原型の画稿を持ち込んでいる。「あ、バウだ!」という反応から岡本氏が「バウだとすぐわかるMS」の画稿を持っていたことは確かなようだ。
(このインタビュー、掲載順が前後しているがモデグラのインタビューより後にやってるように思える)間違いでした。モデグラのインタビューはHGUC発売後です。
この最近の情報で、バーザム自体がZガンダムに寄せていることもわかってきており、可変化する過程でZガンダム化していくのは意外に納得しやすい流れにある。

……以上、「バウ=バーザム説」を憶測まじりで周辺資料と照らし合わせた理由についても触れておく。
失礼な言い方をしますが、出渕裕、岡本英郎、両名とも何十年も前のことを正確に記憶しているとは限らない、というのは念頭に置く必要があります。特にバーザムの話はこの30年全く出てこなかった話だった。
「Zガンダムからデザインされたバウ」と「バウの原型はバーザム」、この矛盾しているようにも見える説明は、どちらかの記憶違いや誤認によるものかもしれません。そのため、むしろ疑う立場で文献を確認し、結果、両者の説明に矛盾はないと僕は結論づけ、その確認も含めて記事としました。
今後この岡本証言が補強されるかもしれませんし、逆に反証も出てこないとは言えませんが、2017年の時点では「バウはバーザム」はある程度確認されたものと考えています。

真面目な話はここまでにして、あとは適当な話をする。

憶測重ね
気付いてる人は気付いている話なのだが、センチネルのリファイン版バーザムにはZガンダムや百式の要素が入ってる…
モデグラ8月号の作例でもガンダムMk-IIとバーザムだけじゃなく、頭部と足首にZプラス、スカートに百式を使用している。
Mk-IIの量産機としての「こうなる筈」のバーザムとしては不自然に思える。

岡本原案バウがどんなデザインだったか結局わからないのだが、バーザムを分離可変機にしてZガンダムと百式の要素が混ざったものだとすると…
センチネルバーザムはバーザムをMk-IIにしてZガンダムと百式の要素を混ぜて、最終的にネオジオンに合流したかもしれない機体…そのムーバブルフレームはネオジオンで生かされた…?

バウのラフを見たのが出渕裕だけとは限らない。明貴美加やあさのまさひこ、カトキハジメも見ていたかもしれないし、見てなくても出渕裕から話を聞いていたかも…

これは真面目な話でもあるのだけど、バーザム改にどうしてZや百式の要素が入っているのかは個人的な謎だった。カトキ氏がエゥーゴ側の機体に似た意匠を持ってくる理由、何もないということはないと思う。
と言ってもトサカがついててZガンダムに似てる機体なんてバウくらいしかないし、まさかそのミッシングリンクを意図してるのか…?と僕が考えたこともないではないのだ。
これを「カトキはバウの原案を知っててそれに近づけた」という設定にすれば個人的な謎が説明できる気がする。
ええ、ほぼ妄想の憶測ですよ!

ザム→バウの系譜を設定に組み込めるか
もちろんAOZの出番である。現シリーズがエゥーゴ編まで話が続けばエゥーゴ仕様バーザムも出てくる可能性があるし、ジェガンのスカートの話が設定に反映されたようにバウとバーザムのつながりも可能なら組み込もうとするに違いない。
現AOZはバーザムを「可変構造を省略した機体」と結論づけ、俗説を設定で肯定する形になっている。しかし建機バーザム自体は可変機ではない。
…可変構造戻しちゃってもいいんじゃないかな。
バーザムはTR-6につながる機体であり、特にハイゼンスレイII・ラーなど分離可変機であり、ほぼバーザム族である。バーザムだって頑張れば変形できるはずだ。
上位機であるTR-6とは別に、可変機構を戻したRX-155とかRX-169あたりが対Zガンダムを意識した次世代・分離可変バーザムであり、それが量産前にネオジオンに回収されてバウになる、という筋書きでなんとか行けそうな気がしてきた。
とりあえずこのミッシングリンクはAOZ設定なしでも創造できるくらいまでは来てる気がするが。

最近わかってきたが、バーザムに引っかかりを感じている業界人は想像よりもかなり多いようで、数年内にはハイザックを上回るくらいにバリエーション増えてるかもしれない。
そこからバウか…
出たら楽しいけど期待まではしてない。
[ 2017/08/01 23:04 ] ガンダム | TB(0) | CM(0)

A.O.Z Re-BootとAOZ2がパラレルである話

本記事は『ADVANCE OF Z 刻に抗いし者』の最終話について書いている。もう完結からだいぶ経った作品であるが、まだ読んでいない人はそのことに注意していただきたい。
今までの記事でも最終話の内容は書いてきたのでいまさらな話であるが…

現在『ADVANCE OF Z』シリーズは、『A.O.Z Re-Boot ガンダム・インレ-くろうさぎのみた夢-』WEB連載で展開している。
読みにくい漫画である。
曖昧な色使い、やたら多い登場人物、飛びまくる時系列、並び順すらどこから読めばいいかわからない。
いや好きなんですよ?
ジオンもティターンズも火星住民もみんな等しくクソだけど苦しい環境で元気に生きてますという本作独自の視点に、見たことのないロボットが説明なしにどんどん出てくる展開で、作者がやりたいことはこれなんだろうというのがよく伝わってくる。
連載は超マイペースの不定期掲載で、2章が一向に終わる気配がなくて全然話が進まないが数えてみたら単行本一冊じゃ済まないくらいのページ数になっててこれどうするんだ感。立体もムックも出なくて商売になってる要素がないぞ。
とにかく読みにくいのはわかっているが、現在は無料で読めるので今のうちに読んでほしい。
何故バーザムが火星で増殖してヒーローになっているのか!ストーリーを読まなければ怪設定の面白さも半減だ。これを読まずに建機ザムを論じちゃならん。
いや本当に小説版「審判のメイス」みたいにリブートも急にパッと消えるんじゃないかと僕は怖いのだ…
[ 2017/07/23 22:46 ] ガンダム | TB(0) | CM(0)